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描いちゃった電気執事ss。
ssにおいては、全員同じとあるお嬢様に仕えてる設定で強行します。

契様のお話。

駄文覚悟のできた人はどうぞ。









 

昼過ぎの屋敷の廊下を歩いていたときのことである。

「契」

呼び止められて

「…鳳」

契は首だけを彼女のほうに向けた。

「何だ」
「それ、どしたの」

鳳は契が抱えているものを指さして言った。
一度それに目をやって契は「ああ」と。

「向日葵?」
「そう。お嬢様が部屋にお花を飾りたいと仰っていたからと思って」
「あ、あー…」

いっぱいに抱えられた向日葵の花束に目を向けて、鳳が何かを言い淀んでいるのに契は気付かない。

「いや、契」
「そうだ。秋の姿をみていないか。用事を頼みたいんだが」
「あー…、えっと、その秋が、今花を摘みに出て行っている」

言いにくそうに鳳が言った。

「恐らくお前と同じ目的で」

契の表情が僅かに曇るのが鳳には分かった。

「……そうか」

失敗したな、契が呟いた。

「で、そろそろ帰ってくると思うぞ。秋」

契は自分の抱える向日葵に目を落とした。

「多分花瓶をもらいに、お前に会いに来る」

そう鳳が言うのとほぼ同時に、廊下の遠くから彼の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
タイミングのよさに二人は思わず顔を見合わせ、鳳は肩をすくめる。

「お前が、陵のような予言をするからだ。鳳」
「やだなー。俺の所為かよ」
「ちょっと持ってろ」

とっさに契は花束を鳳に押しつけた。

「は?ちょ、待ち」
「んで、隠れてろ」

戸惑う鳳にお構いなしで契は彼女の背を押して、廊下の角に押しやった。
契の名を呼ぶ声が次第に近くなり、秋が鳳が隠れたのとは反対の廊下の角から姿を現す。

「契さまー」

廊下を駆けてやってきた秋が契の目の前で急ブレーキをかけると、秋が用件を口にするよりも前に、契は眉間に皺を寄せて声を張った。

「廊下を走るな。大声をだすな」
「ごめんなさいっ」

怒声とまでは言えないものの厳しい契の声に、秋は条件反射で謝る。

「本当に反省してるのか…」

契は呆れたように呟いた。

「してます。以後気をつけます」

そうは言っているものの、秋はそれ以上に気を取られている何かがあるらしく、どこまで本気で口に出来ているのか怪しいところだ。

「まあいい」

と契。

「それで、何のようだ」

用件に移れるのが嬉しいのか秋の顔がぱっと輝いた。

「お花を摘んできたんです!お嬢様のお部屋に飾ろうと思って」

そういう彼の手には数本の黄色い花。
恐らくはパンジーだ。

「花壇からは摘んでないだろうな」
「はい!ちゃんと森まで行って来ました」
「強く握りすぎだ。花が萎れるぞ」
「わっ」

はっとした秋は慌てて茎を握りしめないようにと花を持ち直す。

「それで?」
「飾りたいので、花瓶を頂けませんか」

駆け回ってきたのだろう秋はところどころが泥で汚れていて、頭に葉っぱを引っかけていた。
苦笑しながらそれをとってやる。
それから言った。

「パンジーなら大きな花瓶に入れるより、グラスにでも入れた方が見栄えもいいだろう」
「なるほど」
「厨房に行って燕にグラスを借りてくればいい」
「はい!」

秋は嬉しそうな顔をして頷くと早速踵を返した。
一応、走るなという注意が頭の端に残っていたのか少し早足で歩いていく。
その姿が逆に危なっかしくて、契は目が離せないまま小さくため息をついた。

「転けるなよ。グラスを割ったら燕が泣くぞ」

秋の背に言う。
返事は返ってきたが、どの程度わかっているのか。
廊下の角に姿が消えるまで、契はその背を見送った。

「気が利きすぎるのも難儀だとお前を見ているとよく思うよ」
「それは褒め言葉か」
「そうきこえるんなら、お前も末期だ。契」

契の言いつけ通り姿を隠して二人を見守っていた鳳が姿を現して、契の横に並び立つと呟いた。

「鳳はもっと気が利いてもいいと思うがな」
「気が利きすぎないのが、俺のアイデンティティだ」

廊下に目をやったまま互いには目を向けずに二人は会話を続ける。

「で、これどうすんだ」

鳳は自分が持たされていた花束を契の眼前に抱え上げた。

「お前にやろう」
「いらねえよ」
「遠慮するな」
「遠慮じゃねえよ」

はあ、と今度は鳳がため息を零した。

「花なんて俺の柄じゃないだろ」
「いや、色合い的には大分ありだぞ。黄色黄色してる」
「神々しいか」
「毒々しいな」

鳳は黙って契をどついた。
契は大したダメージもなく笑っている。

「そういえば」

と、鳳。

「紫が向日葵の画を描きたいと言っていた」
「そうか」
「あいつのところにもっていこう」
「多くないか」
「じゃあ燕にやって食卓に飾ればいい」
「そうか」
「悪くないだろ」
「そうだな。鳳にしては珍しい、なかなか悪くない発想だ」

再度鳳は契をどつくが、あまり効果はないようだ。

「気を遣わせて悪いな」

唐突に契がぽつりと呟いて、鳳は驚いたようにその顔を見上げた。
それに気付いていたが、鳳の方を契は見ないままでいる。
その横顔を暫く眺めて、彼女は乾いた笑いを零した。

「気なんか遣うかよ」
「そうか」
「敢えて言うなら、この向日葵を哀れんだに過ぎない」
「そうか」

それから鳳は何を思ったか、束から向日葵を一本抜き取ると、それを契に押しつける。

「じゃあ紫のところに行くわ」

有無をいわせる間もなくそう言って、鳳は向日葵を抱え直すと契に背を向けた。

「まったく…」

何となく契は呟く。
窓から太陽の日を浴びる向日葵が眩しい。
そう感じて目を細めた。
廊下に立ち尽くしていた契は、鳳の足音も気配も完全に感じ取れなくなったのを確認して、自らも仕事に戻ろうと鳳が去ったのと同じ方向へ歩き出した。
そのとき

「契さまー」
「……デジャブか」

背後から彼の名前を呼ぶ秋の声。
契が振り返るとそこにはやはり秋の姿があって

「…花は飾れたか」
「はい!ばっちりです」

満面の笑みで秋は答える。

「お嬢様にも喜んで頂けました」
「そうか。それはよかったな」
「ぼくも嬉しいです」
「それで」

何か用か、と契は先を促す。

「そうでした」

秋は思い出したように自分が手に握っているものを契の目の前に差し上げた。

「これ!」
「花冠…」
「はい。作ったんです」

黄色いパンジーの花冠が秋の手の中にはあった。

「上手なんじゃないか」
「ありがとうございます」
「……うん」
「……はい」

契は褒めてみたが、秋はそれを契の眼前に上げたまま動かない。

「………」

秋が何を望んでそうしているのかがわからず、契は思わず黙る。

「あ、これ」

それに気付いてか秋が慌てて言った。

「契様に」
「俺に…」
「はい。契様に似合うと思って」
「……えっと」

思わぬ展開だったためにどうしたものかと契は言葉を失った。
とても珍しい光景である。

「屈んで頂けますか、契様」

秋の楽しそうな笑顔の手前、断るというわけにもいかず契は膝を折る。
自分の背の届く範囲に降りてきた契の頭に秋は花冠を乗せた。
契が顔を上げる。

「やっぱり。よく似合います」
「…そうか」

秋の笑顔に釣られるように契も微笑んだ。
それから

「これ」
「あ、向日葵ですか」
「お前にやろう」

自分が鳳に渡された向日葵を秋の前に差し出す。

「ありがとうございますっ」

契にものをもらえたことが嬉しいのだろう、秋は感激した声を出した。
それに満足したように契は立ち上がる。
秋の満面の笑みを見て、これもまるで向日葵のようだと、そう思った。


ヒマワリとパンジー


「…契」
「ああ、鳳。紫の役に立ちそうだったか」
「…え、あー、うん。喜んでいた。燕のところにも持っていたが、早速飾ってくれていた」
「そうか。それはよかった」
「…契」
「…ん、何だ」
「いや、何だっていうか。その、え、どうしたの。頭に花が咲いてるぞ」
「ああ。似合うだろう」
「…まあ。別に似合っていないことはないが」
「が?」
「いやにメルヘンチックになってしまったなあと思って」
「そうだろうか」
「俺は別にいいけど。密に変な噂たてられないようにな」
「……それは困るな」

 




実は契様もへこんでいたんだよ。って話。
鳳は契のよき理解者なんだよ。って話。
電気執事の初書きssが契様の格好悪いところというのが、俺らしく最低だなあと思うんだけど。
これをかきながら思い浮かんでしまった話。
秋は契のことをめちゃめちゃ慕っていて、契もあきれながらそれを受け止めてやるという図式。
契は、気が利きすぎて、仲間にも気を遣いすぎる人。
多分、こんなことは初めてじゃないんだと思う。
そうそう、かきかたがかきかたなんで誤解をしやすいかもしれないけど、一応今のところ契鳳でのフラグは皆無です。
でもお互いの信頼度は大分高い感じで。
あとパンジーと向日葵が同じ時期なのかという話は、目を伏せる方向で。
きっと一年中の花が手に入るビニールハウスとかあったりすんだよ、屋敷に←

電気執事序列的には、言わずもがな継様が一番上なことは前提として、
契、鳳、紫 が一番上の世代
槿、新、陵 が二番目
密、鋼 が三番目
秋、燕 が一番下の世代というイメージ。
基本的に上の世代の人には敬語。
同世代同志は結構仲がいい感じ。
やっぱり一番上の世代が一番慕われている。

お粗末様でした。

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